パフォーマンスと言えば、舞台や演劇、身近なところになると大道芸というものがあったりしますが、その中でも芸術性に優れるものを『パフォーミングアート』(パフォーミングアーツ)と言ったりします。

 鹿児島では全国から見ると独特かつ芸術的なパフォーマンスを繰り広げられる方はごく少数なのですが、その少数の中から、鹿児島から全国へ向けて頑張っていらっしゃる『幻空堂』さんにそのパフォーマンスについてお話をいただきました。
(以下幻空堂店主からの寄稿文です。)

鹿児島の狐の嫁入り

 皆様は「狐の嫁入り行列」を存じだろうか。

 夜の山中など、人気がない場所で提灯の様な灯がともる。
 それがひとつではなく、ふたつ、みっつ、ここのつ、とお……。列を成して進んでいく。
 あれは狐の嫁入りじゃ。などと誰かが呟く。
 または近年見られる行事として、狐に扮した者たちが花嫁行列を成す。

 所説あるのでなんとも言えないが、本マガジン「カゴシマガジン」の本拠地鹿児島でも、毎年ハロウィンの時期である十月末に狐の嫁入り行列を見る事ができる。

 揃いの狐面を被って、先頭に露払いとして高下駄の大男、次に白無垢の花嫁、後ろに二十名ほどの黒留袖を着た参列者の男女……。最後尾を務める女性は鈴を振っている。

 その狐の嫁入り行列の主催兼出演をしているのがこの文章を書いている幻空堂である。

 幻空堂とは狐のお面作家である。

 それがなぜ自ら狐面を被って花嫁行列をするに至ったか。

 幻空堂には狐面作家の女性「店主」とアルバイトの男性「雄狐」がいる。

 元々、幻空堂が販売するのは狐のお面のみである。そこには鹿児島の多くの地域に根付いたお面文化と、幾多もある狐の伝承を、幻空堂を通して知ってもらいたいという願いがあるためである。

 自作の狐面の販売の折に狐面を被って販売をしていたのだが、狐面を買っても使う機会が無いとの声に応えて、お客様も狐面を被ってのイベントを主催するようになった。

 平成二十九年に幻空堂として狐面を販売してから少しして、何件か自主イベントなども行っていた頃。もうすぐハロウィンという時期が近付いてきた。

 折しもその頃はハロウィンブームが始まったばかりで、世間はハロウィンに向けて賑わっていた。

 和風のハロウィンがあっても良いのでは?と考えた我々は、とある方のご助言を受けて(ご自身が望まれないかもしれないのでここでは名前を伏せさせていただく。)、雄狐と白無垢の店主を先頭に、揃いの狐面を被って手に提灯を持った黒留袖の男女が行列を成すという「お狐ハロウィン:狐の嫁入り」という着想を得たのである。

 一回目の狐の嫁入り行列は台風のなか行われることになったが、多くの方にご参加いただきご好評を得た。

 以降、流行り病で中断したり、SNSでバズったりと紆余曲折ありながらも昨年の令和五年まで続けることができた。

 地域の皆様にも見守っていただき、おかげさまで現在では開催時には県内外問わずに多くの見物人が集まってくださるようになった。

 狐の嫁入り行列が鹿児島の繁華街天文館で歩くと、人がそこに集まる。行列が通りすぎたあとに残された人々は天文館を歩く。そこで何かしらの出逢いがあることを祈っている。

 また、集まった人のうちの過半数は写真や動画を撮る。そしてそのなかの何割かがその写真なり動画なりをSNSに投稿する。

 県内の者には鹿児島への親しみを、県外へ出た鹿児島出身者には郷愁を。そして初めて見る方に鹿児島のアピールを。

 これからも鹿児島で活動を続けて、微力でも鹿児島の魅力を発信できればと思う次第である。

幻空堂店主 】
狐面屋さん「幻空堂」代表。
狐面作家。イベント業も行う。
自主イベント「幻空堂朗読会」で読むお話しを作話したりもしている。

幻空堂 】
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投稿者プロフィール

清永秀樹
清永秀樹
クリエイティブパフォーマンスBAN/代表
さつま忍者研究会/代表
H26~H29 KADOKAWA Walker plus 鹿児島県地域編集長(最終役職)