1 霧島の地形
霧島市の地形の成立ちについては、これまで幾度となく紹介してきましたが、大きく分けて四つの異なる地形から成立っています。一つ目は、約3万年前、錦江湾を起源とする姶良カルデラ噴火に伴って噴出した大量の火山灰(火砕流堆積物)で形成したカルデラ台地です。その火山灰は、あまりにも大規模で多量だったことから、噴火以前の地形(現在と同じような地形)を覆い尽くし、南九州全域を平坦な台地と成しました。これは水平に一直線に広がる台地を撮った写真です。このように、現在もその痕跡が残しています。
二つ目は、その後、平坦な台地上に窪みができ、その窪みに添うように新たに川(現在の河川)ができました。この新たな川の流水作用によって台地は削られ、谷間を形成していきました。谷間の形成については、前回紹介しました。
三つ目は、大量の火山灰が噴出したため、地盤が沈降してすり鉢状の窪地ができ、そこに海水が入り込んで錦江湾とその周囲を囲むように火口壁ができました。鹿児島市の磯から姶良市の重富まで続く絶壁や福山から垂水へと続く急峻な地形は、姶良カルデラの火口壁そのものです。
四つ目は、約34万年前、現在のえびの市を中心とした場所で、加久藤カルデラが噴火しました。その後も噴火活動は続き、カルデラの南側にいくつもの火山を造り出しました。それぞれの火山(火口も含む)には名称がありますが、わたしたちはこれらの火山群を総称して「霧島連山」と呼んでいます。霧島連山は現在も火山活動を続けており、一概には言えませんが、霧島連山の西側の火山(栗野岳:30万年前)は古く、東側の火山(高千穂:8千年前、御池:4.6千年前)の方が新しい傾向が見られます。ちなみに、このような現象を考慮しますと、今後間違いなく御池の東側(都城方面)に新たな火山ができると思われます。少なくとも数千年から数万年後ですが・・・(笑)。
2 海岸線地域の暮らし
福山の地形は、前述したそれぞれの地形を最も顕著に残しており、その地域に住む人々は地形の環境に見合った暮らしを営んできました。
福山の海岸線は、姶良カルデラの火口壁が迫ってきており、平地は少ないですが南に開けた土地をうまく利用してきました。ミカンやビワは南に開け、水捌けが良く、適度の潮風が吹く好立地な場所で栽培してきました。また、黒酢の醸造は、この地域独自に生息している酵母菌を用いた製法が見いだされ、「福山の黒酢」として全国に名を馳せています。
また、福山は藩政時代、都城島津家(現在の都城市周辺)においては、藩都鹿児島に通じる唯一の中継地でありました。そのため、福山は物資を輸送する拠点として発展していきました。福山に豪商(厚地家・畑井田家など)が多いのはこのような背景があると思われます。
さらには、狭い土地に多くの人々が暮らすには火災に強い町が必要です。そのため、豊富な財力と周辺にふんだんにある溶結凝灰岩を使った、石造りの街並みが発達しました。
3 台地上の暮らし
福山の台地にある牧之原・福地・福沢地域は、地元では「上場地区」とも呼んでいます。この一帯の特徴は、台地上にあることから、平坦ですが水源は乏しく土壌も主成分が火山灰だったことから酸性を帯びており、野菜などの作物の生産には不向きな場所でもありました。
薩摩藩は他藩に比べて士族の比率(薩摩藩25%、他藩5%)が高く、また、仮想敵国として江戸幕府を想定している薩摩藩にとっては、軍馬の需要は非常に高くなっていました。そのため、牧之原一帯は、馬を生産する牧場として最適な場所であり、藩の御用牧場として活用していました。福山には牧之原・牧野、国分には牧神・牧内、霧島には牧神・牧内、そして牧園には牧園・牧場と「牧」の付く地名が多いのも、この霧島連山の南麓一帯が日本有数の馬の生産地であったことを示しています。
現在は、水道の敷設・普及が進み、ハウス園芸やサツマイモなど様々な作物が栽培されていますが、今でも主産業は畜産となっています。
4 中山間の暮らし
福山の中山間地域の特徴は、カルデラ台地を分水嶺として東(宮崎:大淀川水系)並びに東南(志布志湾:佳例川・菱田川水系)に延びる河川が作り出した谷間に水田が広がっています。
カルデラ台地に降った雨水は、地中に浸み込み、湧水となって湧き出てきており、源流にも近いことから水温が低く、さらには谷間で昼夜の寒暖差が大きいことから、おいしい米の生産地となっています。ただ、谷を構成する土壌は火山灰(シラス)であることから、降雨に弱く、大雨の度に崖崩れが発生しており、最近の集中豪雨ではその傾向が顕著に見られます。
このように、福山の人々は地形や気候、風土などを巧みに活かして、その地域に根差した暮らしを育んでまいりました。皆さんの地域の暮らしも先人の創意工夫が鏤めているのではないでしょうか。 文責:鈴木
投稿者プロフィール
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霧島市に在住しています。
読書とボウリングが趣味です。
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