1 日本初の国立公園
霧島錦江湾国立公園は、我が国最初の国立公園の一つであり、昭和9(1934)年3月16日に「霧島国立公園」として誕生しました。本公園のテーマは「霧島山塊、錦江湾、桜島火山~巨大カルデラ群が育む温泉と実りの海~」となっており、大きく北部と南部に区分され、それぞれ霧島地域、錦江湾地域として、特徴的な景観を有しています。
公園北部の霧島地域では、大小20以上の火山が連なり、火山活動に伴って誕生した火口湖、噴気現象、温泉及び高原などとともに、ノカイドウやミヤマキリシマをはじめとした自然植生も多く残されています。
公園南部の錦江湾地域では、現在も噴煙を上げ地域のシンボルともなっている桜島を中心として、薩摩半島側には開聞岳や池田湖、知林ヶ島など、また大隅半島側には亜熱帯性植物が多く生育する佐多岬、そして湾内の海域も含め特色のある景観が広がっています。ちなみに、霧島錦江湾国立公園の歴史は次のとおりです。
昭和9年:霧島国立公園(日本初)
昭和39年:霧島屋久国立公園(錦江湾国定公園+屋久島地域)
平成24年:霧島錦江湾国立公園(屋久島国立公園が分割)
2 霧島連山「御鉢」の噴火
霧島連山の南麓に鎮座(ちんざ)している霧島神宮の大鳥居(おおとりい)入口交差点から、霧島神宮駅(国分)方面へ500㍍ほど下ったところに神宮大橋があります。橋を渡った先の三叉路を右折しますと、「霧島国立公園」の記念碑が見えてきます。記念碑の裏手には湧き水でできた池があり、その周辺は切り立った溶岩壁が見られます。この溶岩壁が溶岩流の最突端であることからここに記念碑が建てられました。
湧水でできた池
溶岩流の最突端部(御鉢からここまで流れてきた)
この溶岩壁は、延暦(えんりゃく)7年(788)に霧島山の御鉢が噴火して、ここまで溶岩が流れてきた痕跡であり、当時の記録(續(しょく)日本(にほん)紀(き))には『延暦7年、3月4日の夜8時ごろに霧島山の御鉢が噴火して、溶岩や噴石による火災や地鳴り、地震などがあった。噴火そのものは4時間ほどで治まったが降灰はひどく、御鉢から約20㌔離れたところで、60㌢もの火山灰が積もった』と当時の様子が書かれています。
3 霧島神水狭遊(きりしましんすいきょうゆう)歩道(ほどう)の溶岩壁
この溶岩壁は、記念碑の近くにある「霧島神水狭遊歩道」沿いにも見られ、溶岩が流れた痕跡(溶岩の断面)を観察することができます。この写真は溶岩流が冷えて固まった「柱状(ちゅうじょう)節理(せつり)」と言われているもので、側面から見ると柱状が連なっていますが、上面からは六角形となっています。
柱状節理化した溶岩の上下にも溶岩が見られる
この現象は、溶岩に混入物がなく、溶岩の温度が一定であることが条件となります。高温の溶岩が均一に冷却されることによって溶岩が収縮し、その際、六角形に亀裂が入る現象が起きます。この写真は水田が干し上がった際に、亀裂が生じたものです。
泥田にできた亀裂
何故か、自然界では一番安定した形が「六角形」となるみたいです。ハチの巣や雪の結晶なども六角形であり、六角は形成時に無駄(隙間がない)がなく、形状的にも強固であることがわかっています。ちなみに、この自然の理(ことわり)を取入れた製品ですが、薄くて頑丈さが要求されるカメラのシャッターに使われており、六角形のハニカム構造を成しています。
4 歴史書とは異なる噴火活動
柱状節理となっている溶岩壁をよく観察しますと、柱状節理を挟むように上下に溶岩が流れた痕跡が見られます。これは、一度の噴火によって、少なくとも3回にわたって溶岩が流れたとこを示しており、最初の大きな噴火は数時間で終わったように思われますが、御鉢から当地域まで溶岩が、しかも3回も流れ着いたことは、少なくとも数週間は噴火が続いたのではないでしょうか。
当時の記録は、大隅国の役人が太宰府(だざいふ)を通じて奈良朝廷に報告するものであり、大まかな現象のみをいち早く報告しました。細かな内容までは報告できなかったのではないでしょうか。また、火山灰が60㎝も積もったことを考えますと、降灰は少なくとも数週間を要したのではないかと思われます。詳細な火山活動につきましては、今後の学術調査を期待したいと思います。このように、当地は霧島に起きたダイナミックな噴火活動を垣間見ることができます。
遊歩道沿いの人口滝
溶岩が垂直に崩落してできた峡谷
最近は、猛暑が続いていますが、霧島神水狭は標高も約350㍍と高く、遊歩道沿いは緑に覆われた渓谷となっており、風光(ふうこう)明媚(めいび)な景色と清涼感が漂う避暑地ともなっています。是非、観光と避暑を兼ねて霧島まで遊びに来ていただければと思います。
文責:鈴木 写真:霧島市、鈴木
投稿者プロフィール
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霧島市に在住しています。
読書とボウリングが趣味です。
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