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薩摩ボタン絵付け師 室田志保さんの挑戦!

垂水市にアトリエ「絵付ヶ舎・薩摩志史」を構え、薩摩ボタンを復活させた室田志保さん。室田さんの絵付け師としての歩みを、詳しくお伺いしました。

室田志保

1975 鹿児島生まれ
1993  鹿児島純心女子短期大学造形芸術コース入学
1995 白薩摩焼窯元 絵付け部入社
2004 鹿児島県青年会議所の海外留学派遣事業留学生に選ばれ『薩摩焼をインテリアに取り込む』のテーマでイタリアフィレンツェに短期留学
2005 鹿児島県大隅半島大野原に、制作用アトリエを構える
2010 日本ボタン大賞展 審査員特別賞 優秀賞を受賞
2015 アメリカボタン祭典(NBS)で展示
   雑誌pen「世界に誇るべき日本の100人」に選ばれる
2016 アンダーソン日本庭園ジャパンフェスタ参加
2017 パリ万博150周年事業 Satsuma week in Parisに参加
2018 シカゴ美術館ミュージアムショップ取引
2023 鹿児島山形屋百貨店にて女性切子作家と二人展
2024 NBS寄付型オークションにて最高価格で落札

絵付け師として独立するための10年修行

室田さんは、鹿児島純心短期大学造形芸術コースを卒業後に、白薩摩焼の窯元に絵付けアシスタントとして就職しました。白薩摩絵付けは、完全分業制です。お茶道具のメインを師匠が描き、室田さんはまわりの紋様を描いていました。

筆に慣れるのに3年。金に慣れるのに3年はかかると言われました。実際に、はじめて金を使わせてもらえたのは、3年くらい経ってからでした。それまでは、お師匠さんが描いた金の輪郭の中に色を入れていく仕事をしていました」と室田さんは話します。

その他、図画工作が得意だったことから、よく荷造りをしていました。

室田さんは、絵付け師として一人前になるために、同じところで10年は修行をしようと心に決めていました。茶道表千家の家元の箱書きを頂けるような窯元で、10年しっかりと、絵付けの修行をしました。

10年の修行を経て、独立をしようと思っていたわけではありませんでした。しかし、お茶業界が、だんだんと下火になってきたことから、働き続けることが難しい状況に。

修行中に、薩摩ボタンを知り、小さなボタンの中に白薩摩の技法がギュッと詰まっていることに魅了された室田さん。当時の薩摩ボタンは、機械で絵付けしたものだけでした。「手描きができる人がいないのなら、薩摩ボタンを手描きで絵付けをできる一人になりたい」と思い、鹿児島県大隅半島に制作用のアトリエを構えることにしました。

デッサン力をあげるための努力

室田さんは、定期的にデッサンの日を設けています。

お茶道具の窯元で働いていた際に、メインの絵は師匠が描いていました。室田さんはまわりの紋様を描く担当だったこともあり、メインの絵を描くにあたっての画力に自信がなかったそうです。デッサン力をつけるために、独立のタイミングで、地元のデッサン教室の先生に相談にいきました。先生から「絵は、上手くなれる。上手くなるのは、訓練だから」と言われ、習うことを決意しました。

デッサン教室に通い始めて、最初の8年は絵を描くことに苦戦をしました。「習い始めて10年目で、たまに先生に褒められるようになった」と室田さんは話します。心が折れるときもあったけれど、薩摩ボタンには画力が必要なので、諦めずに習い続けました。

「この人についていこうと思ったら、足蹴にされても、ついていくのが大事」という室田さんの言葉が、とても印象に残りました。薩摩ボタンを復活させた室田さんだからこその揺るがない信念を感じました。

18年経ったいま、先生から「薩摩ボタンと絵をセットで売ると、説得力があるから、セット販売をしてみては?」と言われるほどになりました。2023年に山形屋で、女性切子作家と二人展をした際に、薩摩ボタンと絵のセットを販売しました。

なにを描くかにこだわった先には

室田さんは、「絵は、訓練をすれば、誰でも上手になれる。でも、なにを描くかは、『個』が出るので、そこにこだわりたいと思いました」と話します。

室田さんが得意とするのは、「虫」の絵。「虫は、よく見ると美しいんです。でも、その美しさをなかなか理解してもらえない。そこを伝えたいなと思っています」と話します。作品を見ると、確かに虫の絵が多い気がします。

アメリカボタン祭典

毎年、7月末から8月頃に開催される「アメリカボタン祭典」。ホテルを借りて、ショールーム、ジャッジング、寄付型オークションと一週間開催される世界で一番大きな大会です。開催場所は、毎年変わり、今年はウィスコンシン州で行われました。

ボタンコレクター達が、テーマに沿った珍しいボタンをA4くらいのトレーに並べ、ジャッジングされます。審査は2日間で、「どれだけ珍しいか?」「審査内容に沿っているか?」などをチェックされます。

一番点数が高い人は、“ファーストリボン”をもらうことができ、「この人の持っているボタンは、珍しい」という名誉が得られます。持っているボタンを、他の人に売ったりする際に、価値が上がるそう!

大会は、全国大会以外に支部大会もあります。 室田さんは、ショールームで、ボタンコレクター達に、それぞれの大会のテーマに合わせたボタンを販売しています。薩摩ボタンは、アメリカボタン大会で有名なボタンなので、「来年は、こんなボタンがほしい」とコレクター達に頼まれています。

室田さんは、2015年から毎年、アメリカボタン祭典に出展しています。初めて出展する際に、JFK空港税関で、半年以上かけてつくった薩摩ボタンが、すべて没収されてしまうという事態に陥りました。コーディネーターと奮闘をし、なんとか無事に取り返せたというエピソードがあります。

実は、寄付型オークションで室田さんは、毎年鳳を飾っています。今年のボタンのテーマは、「パリ」。室田さんは、ダイヤモンドシェイプという菱形のボタンの中に、エッフェル塔に薩摩琉球国表記の5つ星メダルをフィーチャーしたボタンを作成しました。ポイントが高く、高値で寄付をすることができたそうです!

薩摩ボタンを通して、さまざまなチャレンジをしている室田さん。今後のご活躍が、ますます楽しみです。室田さんの作品を購入したい方は、こちらをご覧ください。

https://satsumacc.shop

投稿者プロフィール

上村 ゆい
上村 ゆいヨガインストラクター×フリーライター
ヨガインストラクター×ライター。どちらかというと身体が硬めのヨガインストラクターです。その人に合ったレッスン内容を心がけているので、老若男女問わずレッスンを受けていただいています。ヨガレッスンは、出張ヨガがメイン。趣味は、美味しいものを食べること。ライターとして鹿児島のいろいろなことをを発信していけたらと思います。