鹿児島黒牛とは、鹿児島で育てられた黒毛和牛のブランド名で、味の深みと濃さが特長です。5年に1度開催される「全国和牛能力共進会」では、鹿児島黒牛は2022年に全9部門のうち、6部門で1位を獲得しました。さらに、内閣総理大臣賞まで受賞! 鹿児島の誇るべき特産品の一つです。
「鹿児島の良いものを、鹿児島県民にもっと知ってほしい」という思いがあり、垂水市で黒牛を育てている室田牧場の室田さんにお話をお伺いしました。
室田牧場とは
牛を飼育し、肉用牛を生産することを「肉用牛経営」といいます。肉用牛経営は、子牛を育てて出荷する「繁殖経営」と、子牛を購入して肥育牛として出荷する「肥育経営」に分かれます。
室田牧場で育てている牛の頭数は、現在130頭ほどです。妊娠した牛を仕入れて、出産した子牛を9か月育てて出荷したり、出産(10産ほど)を終えた牛を再肥育し「経産牛(けいさんぎゅう)」として出荷しています。
畜産農家の牛は、冷凍した雄牛の精液を注射して受精する“人工授精”をします。人工授精をしたからと言って、必ずしも受精をするわけではありません。牛の発情は、22日に一回なので、タイミングをしっかりとみての人工授精が必要です。「昔の牛は、発情期になると『モーモー』鳴いて、他の牛に乗ったり乗られたりと激しかったのですが、最近の牛は比較的おとなしい気がします」と室田さんは話します。受精をした牛は、人間と同じ10ヶ月ほどで出産をします。初参のときは、逆子になったり、胎内でひっくり返ってしまうことがあるので、必ず出産には立ち会います。
産まれた子牛は、3ヶ月〜3ヶ月半ほど、親牛と一緒に過ごします。子育てをしている親牛は、子牛を守るために、牛舎に入る人に対して攻撃的になることがあります。しかし、中には、育児拒否をしてしまう親牛もいるそう。乳を飲もうとする子牛を蹴ってしまうので、乳を飲むことができなくなってしまいます。その場合は、ミルクを人の手であげる人工保育に切り替えます。9ヶ月育てたのち、子牛は出荷されます。
室田牧場のこだわり
室田牛は、出産を経た牛を6ヶ月〜12ヶ月かけて再肥育した「経産牛」を出荷しています。経産牛は、旨みが凝縮された赤身の牛肉で、味わい深さが魅力です。「牛肉を食べた!」という満足度の高さが得られるので、ハンバーガーのパティと相性抜群です!
肉用牛として出荷する牛と、出産に向けた牛の餌の配合が異なるため、一般的に再肥育は難しいと言われています。室田さんは、今まで培った専門知識と経験を活かし、こだわった餌で再肥育を行っています。
牛の主食である「粗飼料」。良質な牧草や稲わらを与えることで、質の良いお肉の生産につながるそうです。室田牧場では、秋にお米を収穫したあとの稲わらをつかっています。田んぼに撒く堆肥は、室田牧場の黒牛の糞を使用しているので、地球環境に優しい循環型畜産です。
こちらは、「濃厚飼料」と言い、トウモロコシの実、大豆、綿実、麦などが入っています。炭水化物やタンパク質が多く含まれているので、牛の筋肉をつくるために必要な餌です。室田さんは、抗生物質を混ぜず、無添加の飼料にこだわっています。独自の割合を飼料メーカーに頼んでいるそう。
肥育期間はステージに分かれ、時期によって食べる餌が変わってきます。中期から仕上げ期は、出荷に向けて筋肉を増量したり、脂肪をため込むために、「濃厚飼料」を十分に食べさせます。
飼料だけでなく、水にもこだわっています。室田牧場の牛たちは、大野原集落の先人たちが開拓した水源地から湧き出ている水を飲んでいます。貝の化石、竹炭、備長炭、天然石などを使ってろ過した水なので、カルシウムが豊富という調査結果が出ています。
牛の口に入れるものにこだわることで、質の良い肉に仕上がります!
【いきいき祭り】年に2回しか食べられない室田牧場のハンバーガー
先ほど、経産牛はハンバーガーのパティと相性が良いと書きました。実は、室田牛を贅沢に使用したハンバーガーを食べることができるイベントがあります!
毎年、12月上旬の日曜に開催されている「大野原(うのばい)いきいき祭り」。垂水市高峠の近くにある大野原地区で、2010年から開かれている物産展です。今年の開催は、12月1日(日)9:00〜14:00で、売り切れごめんです!
祭りの名物といえば、大野原だけで作られているサツマイモ、紅はるかの「つらさげ芋」です。「つらさげ芋」で作った焼き芋や大学芋は、甘さ抜群で大人気商品だそう。その他、飲食ブースやいろいろなイベントがあるので、子どもから大人まで楽しめること間違いなし!
室田牧場は、年に2回しか食べられない、幻のハンバーガーを販売します。通常のハンバーガー以外に、ローストビーフバーガーと角煮バーガーが登場です!
室田牧場のハンバーガーの一番の魅力は、室田牧場で育てた黒毛和牛を100%使用したパティ。パティ以外の材料にもこだわっていて、室田さんの父親が育てているレタスや、垂水市にあるパン屋のバンズなど地元にこだわった食材を使用しています。売り切れごめんなので、気になる方は予約(TEL 099-432-7209)がおすすめ!
残念ながら、「大野原いきいき祭り」は、今年で開催が最後になります。来年は規模を縮小して、同時期に、地元の直売所(うのばい)を中心にしたイベントを開催予定となっております。
生産者がつくったハンバーガーを食べる機会は、なかなかありません。ぜひ、室田牧場のハンバーガーを食べに出かけてみてください。
Instagram
https://www.instagram.com/murotafarm
投稿者プロフィール
- ヨガインストラクター×ライター。どちらかというと身体が硬めのヨガインストラクターです。その人に合ったレッスン内容を心がけているので、老若男女問わずレッスンを受けていただいています。ヨガレッスンは、出張ヨガがメイン。趣味は、美味しいものを食べること。ライターとして鹿児島のいろいろなことをを発信していけたらと思います。
この著者の最新の投稿
- 2024年11月11日垂水市【鹿児島黒牛】こだわり抜いた餌で経産牛を育てている「室田牧場」
- 2024年10月21日鹿児島市エリア栄養士・管理栄養士が横のつながりをつくり、新たなチャレンジができるコミュニティ「栄縁」
- 2024年10月16日コラム薩摩ボタン絵付け師 室田志保さんの挑戦!
- 2024年9月26日垂水市鹿児島県民には知っててほしい! 「薩摩ボタン」の復活までの道のり