島民に刻まれた沖永良部台風
「台風銀座」・「台風の通り道」など奄美群島はその昔からそんな異名を持っていた。私の生まれ年の昭和52年(1977年)9月9日には台風9号(通称ベイブ)が襲来しのちに「沖永良部台風」呼ばれて今でも島民の記憶の中に深く刻まれている。沖永良部台風は9月2日に「カリロン諸島(ミクロネシア)」近海で発生し発達しながら沖永良部島に直撃し夕方から夜にかけて上陸し暴風域に入ったのが9月9日夜だった。夜11前には日本の観測史上最低気圧907.3mb(現在hPa)を記録し、同時刻ごろに風は最大風速39.4 m/s(最大瞬間風速60.4 m/s)を記録した。その後猛烈な風のために風速計の支柱が傾き、それ以後観測が不可能になった。沖永良部測候所の見積もりでは、最大瞬間風速は80m/sに達したと言われている。島の住家の半数以上が全半壊するなど大きな被害が生じた。私の母は「あなたを身籠もり11月に出産したのだが、身重で大変不安な夜を過ごしたのを覚えている」と話してくれた。また、父は「あと2時間暴風域が続いていたらうちも倒壊していたかもしれない」と当時を思い出しながら笑っていた。ちなみに気象庁が通称を命名したのが昭和ではこの「沖永良部台風」が最後だと言われている。それ以降42年間の間2019年に「房総半島台風(台風15号)まで気象庁が通称を命名することはなく、まさに昭和を象徴する台風であったことを物語っている。
そこから培った様々な知恵
17年前に島にUターンして来てからたくさんのことを父から教えてもらったがその一つに台風の対策がある。950hPa(ヘクトパスカル)を切ってくる台風が本気の台風対策の基準であること。(※あくまでも我が家の基準)台風の目がある方向を向いて左手の方から台風の風が当たってくること。我が家の雨戸の閉め方や角材で固定する箇所や釘やビスで固定が必要な箇所など詳細に決まっている。それは誰に教わったのではなく紛れもなくそこで暮らしていく人のその家で暮らしている人の「暮らしていくための知恵」であると感じる。人工衛星などがない時代はもちろん台風の予測など十分にできるわけはない。風の強さはもちろんの事、夕日の美しさや鳥や動物や虫などの動向を注意深く観察して予測をつけていたはずである。その中で暮らしていた島民は未曾有の沖永良部台風の最中でも死者を出さなかったという。とてもすごいことであることと同時にそれだけ「備え」がある日常であるということではないだろうか?
気候変動と台風の変化
昨今はここ離島の台風被害より九州から北海道までのいわゆる「内地」での被害が多く目につくように思える。それは気候変動による海水温の変化に大きく起因しているのではないだろうか??台風が沖縄や奄美大島近海で突如発生することが多い。そして勢力を保ったまま首都圏や東北地方、台風とは無縁だった北海道までその被害が北上していると感じる。その辺の実態を後編でまた書いてみたいと思います。現在台風14号(猛烈な台風)が接近北上中!くれぐれも台風対策万全に!被害がないことを祈ります!お気をつけて!
投稿者プロフィール
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●経歴/実績
・鹿児島県沖永良部島に生まれる
・鹿児島県立沖永良部高校卒業
・中京大学体育学部卒業
・オーストラリア、ケアンズでダイビングのインストラクターとしてGBR(グレートバリアリーフ)の水中ガイドを経て名古屋の海外旅行専門の旅行会社で旅行業に携わる
・長女の出産を機に故郷沖永良部島(おきのえらぶじま)へUターン
・島の交通や運送を司る企業での実務を経る
・島の観光協会の初代事務局長に就任
・島の二つの町(沖永良部島は2町1島・和泊町/知名町からなります)の観光協会の一元化、法人化
・地域のプラットホーム(DMO)の基礎を作る
・地方の脆弱な観光予算の中、会員の皆さまと共に情報の一元化をすべくWEBサイトの立ち上げ、運営
・自主財源を獲得すべく島の特産品の販売を事務局内の店舗で開始、ECサイトも開設し運営を開始
・観光協会の旅行業登録を推進、着地型の体験観光組成に着手
※気軽にできる観光体験から島のメイン産業である農業体験の開発、企業研修のコンテンツのコーディネートからガイドまで一貫して行える仕組みを組成
・地方創生やコロナ対策の交付金を行政と連携し活用、事業を構築・実施
・DMO組織構築事業やブルーツーリズム・グリーンツーリズムの構築・運営、拠点整備事業の起案やその後の指定管理業務の実施【令和元年度版地方創生関係交付金の活用事例】に掲載
・国土交通省観光庁広域周遊観光促進のための専門家登録(2021.10)
・鹿児島県知事登録旅行サービス手配業者第20号登録(2022.03)
・株式会社 oldie-villge 設立( 2022.07.01 )
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