沖永良部フィッシング主宰・前田翔清さん
『沖永良部フィッシング』を主宰する前田翔清(かすが)さん。
「釣りで島おこし。」をモットーに、島で有志を募って釣りに行ったり、Instagramで魚の情報を発信しています。ふだんのお仕事は、和泊町役場の経済課において林務水産係を務める公務員。今回、プロジェクトを立ち上げた経緯や、その詳しい活動について尋ねました。
釣った魚を水槽に入れて愛でた高校時代
「沖永良部フィッシングは、高校で立ち上げた部活が元なんです。中学3年に、当時入っていた卓球部の引退に合わせて本格的に釣りをはじめて、高校に卓球部がなかったことから、『じゃあ好きなことをやろう』と有志を募って部活を立ち上げました。名前を付けたのは、高2に入ってからでした。」
「海=危ない」という理由で高校の認可は下りず、自己責任ということで非公式の部活として活動していたそうです。活動内容は、釣り、釣り、釣り。放課後や休日、またときには朝練として朝5時頃に集まって釣りをして、そのまま登校するという日を過ごした前田さん。
卒業前には、全学年から集まった部員は10人程度に。とはいえ、釣りは、高校生や、ましてや子どもに限らない趣味。いつでもだれとでもできるということもあってか、前田さんが卒業して島を出たあとは、高校の部活としての活動も終了しました。
高校3年生の前田さんは、カンモンハタ(方言でスミチャ)を水槽に入れ、夏から卒業まで飼ってみたこともあるとのこと。3日も経てばエサを求めるようになるなど、意外と人に懐くことにびっくり。島を出るときには泣く泣く唐揚げに…ではなく、海へリリース。
卒業後は、大阪にある水産系の専門学校へ進学した前田さん。そこでも魚や釣り尽くしの生活を送り、3年前の2020年の春にUターンして地元の役場職員に。一年目で配属された先は、水産関連業務もある経済課。よっしゃ!と、心の中でガッツポーズを取ったそうです。
釣りは生きることと地続きの趣味
そんな前田さんにとって釣りの魅力は何なのか、聞いてみました。
「釣り人それぞれだと思いますが、海という自然に身を置かせてもらい、釣りを通して楽しみを満たしながら魚とのコミュニケーションができて、また釣ったものは食べ物になる。遊びの側面も強いと思いますが、生きることと地続きの趣味だなと感じています」
どこにいても車で10分も走ればだいたい海にアプローチできる、沖永良部島。
磯釣りだけでも10~20種類の魚を釣ることができ、沖に行けばカンパチなどの魚が何十種類と釣れるそうです。前田さんは高校時代と同様に、今も潮や風向きの条件が合えば、仕事帰りや休日など、多いときで週4回は釣りへ。北風が強く肌寒い冬でも、「この時期の魚はどんなコンディションなんだろう」と気になって寒さに耐えながら行くこともあります。
今まで釣った一番の大物は、高校3年生の頃に田皆岬で釣ったカスミアジ。原付の足元に乗せてなんとか持ち帰り、その日の夜は釣り仲間を5~6人呼んでパーティーを開きました。
これまでに釣り中に起こったピンチは?と聞くと、答えは「数え切れないほどあります」。
もっとも印象に残っているピンチは、釣りをはじめて間もない頃に、打ち捨てられていた小さなボートに同級生と二人で乗ってみたときのこと。風向きが悪く、沖へ沖へと流されて、薄暗くなり、電波がギリギリ届く範囲で知り合いの漁師さんに緊急連絡して助かりました。
このことがきっかけとなり、それからちゃんとした知識を身に付けようと釣りまわりの勉強を本格的にはじめたそうです。
島で「魚を食べたい」という声を増やしたい
今は、釣りというよりも、魚についての興味と活動が多いという前田さん。
というのも、今日本では全国的に魚食文化が衰えている傾向があり、世界全体においては逆行する流れにあるそうです。そこで島の水産業を担う一人として、沖永良部島にはいろんな魚がいて、いろんな食べ方があると知ってもらいたく、Instagramで発信を続けています。
「昔のセリの写真を見ると、いろんな種類の魚が並んでいるんですが、今島で買える魚は限定されているんですよね。『こういう魚をもっと食べたい』という島民の方々の声が増えれば、漁師さんもそれに応えて魚の流通量も増えていくと思います」
役場の職員(総合職)は、配属先も変わっていくもの。それでも魚に関わり続けていきたいと考え、先を見据えて、今年の7月には漁業権を得て地元漁協の組合員になった前田さん。
「部署が変わっても、『魚のことなら●●課の前田まで』と言われるようになりたいですね」
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文・写真:ネルソン水嶋(えらぶカレンダー運営者)
写真提供(一部):前田翔清さん
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