さつま狂句、MBCやNHKで番組になっているのを聞いたことがあるかもいらっしゃるかもしれません。
昨年はカゴマニアさんによるさつま狂句防災カレンダーで目にした方も多いかもしれませんね。
鹿児島弁による生活に根差した川柳「薩摩狂句」について、本記事は「薩摩狂句にがごい会」の有村さんにお話を伺いました。この記事を読んで、鹿児島弁や薩摩狂句に興味を持っていただけたら幸いです。
薩摩狂句にがごい会ブログ
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歴史
明治41年6月4日の鹿児島新聞(現南日本新聞社)に、6句掲載されたのが
最初。当時、東京では川柳が盛ん。さらにお隣の肥後では「肥後狂句」なるものが滑稽味に冨み、しかも社会や人間の機微をうがった、いわゆる平民文学なるものが行われていたので、鹿児島でも方言を加味した薩摩調の狂句を創めようと新聞社が提言したのが始まりだそうです。
定義
人の気持ち、家庭や社会の出来事を詠むのが基本です。人間を素材にして、それに、穿(うが)ち味・真実味・皮肉味・滑稽味など、いわゆる狂句味を加えて鹿児島の方言で17音字にまとめたものがさつま狂句とされています。
まとめると、以下のようになります。
- 人間が素材である。
- 狂句味を加える。
- 鹿児島弁で表現する。
- 5音・7音・5音の17音字である
※ 拗音(や・ゆ・よの小文字)は2字で1字と数える
例: 焼酎 (しょちゅ) 2音字と数える
社長 (しゃちょ) 2音字と数える
作例
有村さんより、作例と解説もご紹介いただけました。
- 抱た猫が酷で加齢臭ち逃げ回っ
(抱いた猫が酷い加齢臭と逃げ回る)
- すっぴんで女房は出っ行たハロウィン
(すっぴんで女房は出て行ったハロウィン)
- 出っくらめ言たがこん家は妻名義
(出ていけと言ったけどこの家は妻名義)
- 宇宙でな地球い行っなち布令が出っ
(宇宙では地球に行くなと布令が出た)
- 返納すい免許い焼酎を嗅ませっ
(返納する免許証に焼酎を嗅がせた)
- 美容ん良ち後と歩んで落てた溝
(美容に良いと後ろ歩きで落ちた溝)
- テレワーク合間め台所もさせられっ
(テレワークの合間に台所の仕事もさせられる)
- 粋な爺が入所したなあ婆が騒動
(粋な爺様が入所したなら婆様達が騒動)
- 跡継っのソーラパネルが畑け来っ
(跡継ぎのソーラーパネルが畑に来た)
- 骨董品箱ん煤けが値打ち加勢
(骨董品箱の煤けが値打ちに加勢)
テレワークやソーラーパネルなどわりと最近の横文字も組み込まれていて表現が豊かですね。鹿児島に住む人たちの生活が鹿児島弁で生き生きと詠まれています。
唱について
唱は、句を引き立てるために、選者が付けるものだそうです。短歌と同じように、狂句が5・7・5に対し唱は7・7としております。
テレビやラジオ、書籍の企画などで選者が解説と併せて付けているのを見たことがある方がいらっしゃるかもしれませんね。
- 招待の金凄ぜ料理い隅で入れ直えっ
(招待されて持参したお金を、凄い料理に隅っこで入れ直した)
(唱) 皺をば伸べっ二枚も足せっ
(皺を伸ばして二枚足した)
- 多け中けな横ごも居た鯉幟
(多い中にはひねくれ者も居た鯉幟)
(唱) 竿い巻付たい仰向けなったい
(竿に巻き付いたり仰向けになったり)
- 頼ん女房其んた投ぐんな柿右衛門
(頼むよ女房それは投げるな柿右衛門)
(唱) 安し中皿なら割れてん良どん
(安い中皿なら割れても良いけど)
- 子も巣立っゆっくい脛ん養生をしっ
(子供が巣立ちしてゆっくりと脛の養生をしている)
(唱) 子育し中は痛さも知れじ
(子育中は痛さも感じなかったが)
作り方
有村さんより作り方も教えていただきました。
「鹿児島弁が苦手な方は、一文字でも鹿児島弁を入れて作ることから、始めてみましょう。」
とのことです。まずは形からですね!
有村さんの所属する「薩摩狂句にがごい会」では会報誌なども発行されております。薩摩狂句に興味のある方は、ぜひブログやInstagramからお問い合わせをしてみてはいかがでしょうか。
投稿者プロフィール
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