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『薩摩ホグワーツ』から始める薩摩ミームの世界(後編)

前編はこちら

えのころ飯

 子犬の内臓を抜き、そこに米を詰め蒸し焼きにするという『えのころ飯』。ネットミームとしては薩南示現流(作:津本 陽/漫画:とみ新蔵)のコミック版から1コマ取られる事が多い様です。
 薩摩は他藩に比べ肉食が盛んで、一説によると作物の取れない貧しい生活だったという話もあるが、実際は肉食でかなりの栄養が賄えていたのでは?という説もあります。

参照:えのころ飯は実在した?江戸時代に薩摩地方で食べていた犬肉料理(ほのぼの日本史)

ひえもんとり

 薩摩で行われていた言われる創作感の強い風習の1つ。
 里見 弴(さとみ とん 1888~1983年)『ひえもんとり』では「死刑を執行され首を落とされた囚人の周りに丸腰の男達が群がり、自分の歯や爪だけを使って死体を食い破り、生肝を抜き取って薬にする。」とあり、平田 弘史の劇画『薩摩義士伝』では、「死罪人を馬に乗せて放ち、東西に分かれた武士たちが死罪人の生肝を求めて争奪戦を行う。なお、放たれた死罪人は所定の位置まで逃げ切れば無罪放免となる。」とありました。

 後者の作品がコンビニコミックとして安価で手に入れられる事が多い事もあり、ネットミームでは『薩摩義士伝』での内容がよく使用されます。

参照:薩摩の度胸試し!ひえもんとりや肝練りは実話なの?(ほのぼの日本史)

肝練り

 車座で座り、その中央に点火した火縄銃を天井から吊るし、車座に座った薩摩武士を狙って回転させる1種のロシアンルーレット『肝練り』。
 一番古い出典は江戸時代に肥前国平戸藩主の松浦清が書いた随筆『甲子夜話』と言われており、ネットミームで使われるのはコンビニコミックとしても出版されている『薩南示現流』(原作:津本陽/漫画:とみ新蔵)です。

 2018年NHK大河ドラマで放送された『西郷どん』で島津斉興に島津斉彬がロシアンルーレットを迫るシーンはこの肝練りが元ネタでは?と言われています。

参照:『肝練り』とか最初に言い出したのは誰なのかしら ~薩摩藩の火縄銃ロシアンルーレット宴会行為『肝練り』の起源を辿る~(Togetter(トゥギャッター))

『薩摩』で盛り上がる薩摩人の知らないインターネットの世界

 2023年2月10日にきっかけが投稿された『薩摩ホグワーツ』は2023年3月4日になった今でも新しい話が続々とTwitter上に上がってきています。

 私の研究する『忍者』という文化も古来より様々な話が作られてきましたが、昭和時代に伊賀上野市の忍者観光が成功するまでは、地元の方々の中には『忍者』という言葉に嫌悪感を抱く方もいらっしゃった様で、甲賀市では「我々は忍者ではない。甲賀古士だ。」と主張する方もいらっしゃった様です。

 今の鹿児島県民の中には嫌悪感を抱く内容も含む薩摩ミームですが、上手く付き合えば爆発的な宣伝効果をもたらすのは確かでしょう。

 まずはこういった楽しみがインターネット上に存在する事だけでも知っておくと良いのではないでしょうか?

投稿者プロフィール

清永秀樹
清永秀樹
クリエイティブパフォーマンスBAN/代表
さつま忍者研究会/代表
H26~H29 KADOKAWA Walker plus 鹿児島県地域編集長(最終役職)