がん患者の家族に伴走するスペシャリスト『がん家族セラピスト』

　清永です。
　私はホームヘルパー２級の資格を持っておりまして、介護の現場も見てきたのですが、病に罹った当事者だけではなく周りの家族にも苦労が掛かってくるものです。
　昔は「家族内で何とかするもの」というのが通念でしたが、現在ではそのサポートを様々な機関が行っております。
　今回は私の知り合いでもある一般社団法人Monami代表理事酒井たえこさんに、がん患者の家族をサポートする『がん家族セラピスト』についてお話しを伺いました。

『がん家族セラピスト』とは？

『がん家族セラピスト』とは？

ーー「がん家族セラピスト」について簡単に説明をお願いします。

　がん患者を支える家族は、社会から孤立し、うつや不眠症、強い不安にさいなまれる人も多い。そうしたがん患者の家族を支える日本で唯一の専門資格が「がん家族セラピスト」です。
　「がん家族セラピスト」の役割は、一人で悩みを抱えている、がん患者家族（私たちは親愛の意味をこめて、がん家族とお呼びしています）の苦しいお気持ちなどを聞かせていただくのと同時に、悩みを解決できる先があればそれをお伝えいたします。
（解決できる先とは…　例えば、がん相談支援センター・市町村の高齢福祉課・がんを得意とするファイナンシャルプランナーなど）

ーー「がん家族セラピスト」は全国でも何名くらいいらっしゃいますか？
　内、鹿児島にいらっしゃる方は何名でしょうか？

　当初「がん家族セラピスト」は創始者である酒井たえこ１人でしたが、がん家族セラピスト育成講座が2023年１月よりスタートしたので、現在、全国で３名（酒井を入れると４名）です。また６月には新たに３名誕生します。
　６月で７名ということになります。
　今は、東京と大阪に「がん家族セラピスト」がいます。しかし鹿児島ではまだいないので、もっと鹿児島県の方々にも、がん家族に支援が必要なことなどをお伝えしていきたいと考えています。

補足（酒井）：
　がん家族セラピスト育成講座は、zoomで開催しているので全国の方々に学んでいただけます。
　また、今は２期生講座が終盤となりました。６・７月は単発講座や説明会があり、８月から３期生募集の予定です。

ーー最近あった印象的なサポートがあったら教えてください。

　印象的なことと言えば、在宅での看病についてのサポート（アドバイス）をさせていただいたことです。
　Aさんという４０歳の女性がご相談に来られました。相談内容は、Aさんの夫の父親（７０歳後半）ががんを患い、医師からは余命が長くないと言われた。看病をしなければならないけど親族の間では、コロナのこともあって高齢の父を入院させるのは可哀そうだから私と夫が住む家で看病して欲しいと言う。Aさんも舅にいろいろ良くしてもらっているので家で看病をしてあげたいと思うけど、どうしても自信がない。がん患者を家にいてもらうことが不安でたまらないという事でした。
　今はがん患者を入院だけでなく、通院や訪問診療で治療を行い、お家で看病をする在宅看護（参考：https://www.zaitakukango.com/yakuin.html）を選ぶご家庭が増えてきました。しかし、実際に患者を在宅看護するのには「どんな医療が関わってくれるのか」「家で患者を家族が支えるってどうすればいいのか？」「患者が家で過ごすために必要な用具などが分からない」など分からないことだらけで家族は不安を抱えてしまいます。
　そこでがん家族セラピストとして、Aさんのお話しをしっかり伺いながら、病院のがん相談支援センターに在宅看護のことを相談するようお勧めしました。つぎに、訪問看護師がどんなことをしてくださるのかなどを簡単に説明し、相談者様以外のご家族はどう考えていらっしゃるかの話し合いができるようにサポートさせていただきました。
　Aさんの不安な気持ちは無理もないことです。在宅看護となれば、できることならば親族の方々と、役割分担をした上で、国の制度で利用できるところはしっかり利用していくことが望ましいですよね。

ーーもしご家族ががんになった時、真っ先に行った方が良い事があったら教えてください。

　患者との話し合いと、患者以外の家族の話し合いです。
　大切な人ががんだと告知されると、衝撃がおおきく話し合いなんてできないかも知れませんが、告知後には治療を受けるために考えたり調べて決定していくという大変な作業がまっています。だから、治療が出来る限り患者とその家族の想いに添えるように、話し合いをすることが良いと思います。話し合いのコツは、不安な気持ちを言い合うことから始めると案外、家族それぞれの不安の大きさの違いに気づいたり冷静になれたりします。