鹿児島の県下三大祭りと言えば、現在では『おはら祭り(鹿児島市)』『お釈迦まつり(志布志市)』『弥五郎どん祭り(曽於市)』だそうですが、鹿児島三大行事というのはご存じでしょうか?
鹿児島三大行事とは?
薩摩藩で行われていた教育システム『郷中教育』内で行われている行事を言い、『妙円寺詣り』『妙円寺詣り』『曽我どんの傘焼き』を指します。
昔ながらの郷中教育と言えば今では無くなった様に思われている方も多いのですが、まだ鹿児島市内では昔ながらの学舎が存在しており、その伝統を粛々と引き継いでいます。
『妙円寺詣り』については多くの方々が参加するお祭りとして現在では定着しましたが、『赤穂義臣伝輪読会』『曽我どんの傘焼き』については学舎に関係する方々が先導する形で行事が行われています。
それぞれの行事に関しては学ぶテーマがあります。
『妙円寺詣り』では関ヶ原の戦いで敵中突破をして多くの犠牲を払いつつも島津義弘公を薩摩に帰還させた事に由来して、当時の苦難を偲ぶと同時に心身の鍛錬が目的。
『妙円寺詣り』では赤穂浪士の話から主君に対する『忠義』を学び、『曽我どんの傘焼き』では曽我兄弟の仇討ちの話から親に対する『孝』の心を学びます。
検索してもあまり情報が出てこない「曽我兄弟の歌」とは?
『曽我どんの傘焼き』では「うたいあげ」として「曽我兄弟の歌(狩り場の嵐)」が歌われます。
私の調べでは出自が不明なのですが、実際事件のあった現在の静岡県富士市では富士市の文化財課に訊いたところ「まったく知らない」という事だったので、薩摩で作られた歌なのではないでしょうか?
全部で18番まである歌なのですが、ネット上にほとんど情報が出ていないので掲載致します。
【曽我兄弟の歌(狩り場の嵐)】
1,雲居にそびゆる富士が嶺(ね)の
み雪はとけてもとけやらで
十有八年つもりこし
恨みをはらしし 物語り
2,そもそも曽我の兄弟(はらから)が
幼き時の名を問えば
兄をば一万 弟をば
箱王とこそは呼びにけり
3,二人が年を合わせても
十歳(ととせ)に足らぬ幼子(おさなご)を
母はつくづく打ちまもり
いとど涙にむさびけり
4,幼き彼らが心にも
恨みは五体にしみわたり
成長したらんその時は
仇をば討たんと待つ月日
5,春夏秋冬一日に
来たらんものかと語り合う
二人が言の葉きく母は
末頼母(すえたのも)しくぞ思いける
6,時しも九月の十三夜
月影くまなき庭の面(おも)
ながむる折しもみそら行く
雁(かり)をば二人はながめつつ
7,兄上五つの雁のうち
二つは彼等が父母か
鳥だに父母あるものを
なげくもげにこそ道理なれ
8,過ぎゆく光陰矢のごとく
一万今年は髪を上げ
曽我の十郎祐成(すけなり)と
名を改めてぞ呼びにけり
9,箱根にありし箱王も
曽我の五郎と名乗りつつ
母の心にそむきしも
この世におわさぬ父のため
10,建久四年の夏五月
頼朝(よりとも)富士の裾野にて
御雁(みかり)をなす由 伝え聞く
二人の心や如何ならん
11,定めて仇の祐経(つねすけ)も
共にあらんと勇み立ち
覚悟をきめて 兄弟(はらから)が
刀の目釘ぞしめしける
12,御狩(みかり)の供にことよせて
それとはいわねど死出の旅
覚悟をきめて兄弟(はらから)が
別れを告ぐるや母のもと
13,母はそれぞとくみしりて
今更別れぞ惜しまるる
身を大切にのひとことは
如何なる心やこもるらん
14,さらでも暗き五月雨の
雲吹き乱す山嵐(やまおろし)
篝火かげも かげきえて
あやめもわかぬ やみの夜半(よわ)
15,しのつく大雨 おかしつつ
木戸木戸うちこえ忍び入り
奥なる板戸を開け見れば
祐経(すけつね)ここにぞ寝たりけり
16,十郎枕を蹴散らして
祐経(すけつね)よく聞け よく聞けよ
十有八年 吾々は
忘るるひまなき親の仇
17,かえさんものぞと切りかかる
きっさき鋭き兄弟(はらから)が
その太刀風に 年ごろの
恨みの露をば晴らしける
18,恨みは晴れてもやがて身も
消えにしあとを 来てみれば
尾花が袖に散る露に
いとど涙にむせびけり
参考動画:https://www.facebook.com/watch/?v=514652738736096
【 令和5年度「曽我どんの傘焼き」 】
鹿児島三大行事保存会
開催日時:2023年7月29日(土)19:00~21:00 点火20時前
(荒天時の振り替え開催日として同年8月5日(土))
場所:鹿児島県立石橋記念公園(鹿児島市浜町1−3)
演目:薩摩の傘踊り・剣舞 曽我兄弟ほか・薬丸野太刀自顕流・うたいあげ・傘焼き
HP:https://kasayaki.karakasa.com/
投稿者プロフィール
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クリエイティブパフォーマンスBAN/代表
さつま忍者研究会/代表
H26~H29 KADOKAWA Walker plus 鹿児島県地域編集長(最終役職)
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