「手記を出そうと思っているの。」
その言葉を聞いたのは、今年のはじめにお会いしたとき。
さまざまな出来事が重なり、数年ぶりにお会いしました。お互いの近況などをぽつりぽつりと話し、佐知さんの今までを知ることとなったのです。
結婚生活も間もない頃の子宮頸がんの発覚。1%でも妊娠ができる可能性があるのならと、未来を信じて子宮を温存する手術を選んだこと。そして術後の後遺症に悩みながらも、不妊治療を経て、ようやく授かったこと…。
子宮頸がんの治療や不妊治療を経験したからこそ、誰かに響く言葉がある。
わたし自身も子宮内膜症 チョコレート嚢胞の治療を経験したからこそ感じたことです。
経験したことがある人にしか分からない痛みがある。
でも、経験していない人にこそ知ってほしい想いがある。
『あさひと生きる』〜子宮頸がん手術を乗り越えて天使のママになったわたし〜を出版したのは、現在フリーアナウンサーとして、司会や講演、企業研修や朗読コンサートなどを行なっている柳佐知さんです。
本のはじめにの部分に書いてある
「私と同じような思いをしてほしくない」。その一心で、本を出すことを決めました。
あさひと生きる
という佐知さんの想いをお伝えできたらと思います。
相手の立場に立って事情を考えてみることで、より温かい世界になる
2023年8月5日(土)に鹿児島私立天文館図書館4階交流スペースで、柳佐知さんの出版記念イベントがありました。テーマは、「わたしらしくココロ豊かに生きる」。
二部制で、第一部はコントラバスとピアノによるサマーコンサートでした。
コントラバスの森田良平さんとピアニストの室屋麗華さんの演奏に合わせて、佐知さんが出版をする本の朗読。
結婚して2年目くらいになると当たり前のように
あさひと生きる
「子どもは?」「そろそろ?」って聞かれるし、
「ちゃんと仲良くしてるの?」とか不仲を疑われたりするんだけれど。
赤ちゃんって、できる人はできるのだろうけれど、
みんながみんなそんなに簡単にはできないのです。
結構傷つくのです。
頑張って頑張って努力をしたら合格ができる、訳ではなくて。
あさひと生きる
受験勉強と全然違うのが不妊治療の辛さ。
どんなに頑張っても頑張っても得られないものがあるんだよね。
何気なく発した言葉が、ときに傷つけてしまうこともあるのです。
誰しもが、何かしらの事情を抱えている。その事情を考えてくれる人が一人でも増えたら、きっと世界は温かいものになるのでしょうね。
わたし自身も「早く結婚しないと、子どもを産むタイムリミットがあるからね。」という言葉に傷ついたことがあるからこそ、特に心に残った言葉でした。自分の意思ではどうにもできないこともあるのですよ…本当に。
優しい音色に合わせた佐知さんの朗読は、言葉一つ一つがココロに染み渡って、そのときのリアルな情景を想像させてくれました。
自分の健康を過信せずに、まず定期検診!
第二部は豊平有香さん&東郷さくらさん&柳佐知さんによる座談会。
シンガーソングライターの東郷さくらさんは、昨年乳がんを公表しました。
がんサバイバーとしての座談会。MBCの豊平有香アナウンサーが、お二人に質問をしていきます。
厚生労働省と国立がん研究センターにより2022年5月に公表された「2019年の全国がん登録」によると、新たにがんと診断された罹患数は99万9,075人だそうです。
がんは、それほどまでに身近な病気なのです。
だからこそ、定期的な健診を受け、早めに発見につなげることが必要なんですよね。
座談会の中で、「手のひらの上に残ったものが大事」という言葉がありました。指の間からこぼれ落ちてしまう幸せもあります。でも、手のひらに必ず何かしら残るはず。
小さくてもいいから、手のひらに残ったものを大事にしていきたいなと思わせてくれる言葉でした。きっと手のひらに残ったものに気づけたときに、「わたしらしくココロ豊かに生きる」ことができるのかもしれません。
一部は静かに耳を傾けている人が多かったのですが、二部は会場のあちらこちらから鼻を啜る音が聞こえてきました。体験談というものは、それほど人の心に響くものなのです。
自分自身の経験と向き合うことは、ときにツラさを感じます。
それでも、このようにご自身の経験を伝えてくださる方がいることは、本当に尊いことだと思うのです。
みなさん、自分の健康を過信しないで定期検診に行きましょうね。
名前の由来の通り、ママの道を照らしてくれた「あさひ」ちゃん
朝陽にたくさんの希望をもらっているから、
あさひと生きる
周りを明るく照らし、希望となりますようにって願いを込めて。
あさひちゃんって呼ばせてね。
本のタイトルでもある「あさひ」ちゃんは、佐知さんのお子さんの名前です。
天使ママになった日から、毎日のように泣いていた佐知さん。
簡単に前に進めることでも、気持ちを切り替えることができることでもありません。
さまざまな感情を経て「あさひちゃんのおかげで、より人の温かさを知ることができた」と話してくれました。
手記は、子宮頸がんが発覚した2018年からスマートフォンに書き留めていた日記をまとめたものです。蓋を閉じていたものを開き、向き合うことは生半可な覚悟でできることではありません。
それでも佐知さんは、「自分の経験を語ることで誰かの背中を推せるかもしれない」と向き合うことを選びました。
苦しくて逃げ出したいときも、あさひちゃんがそっと背中を押してくれた。名前の通りに、ママの道を照らしてくれたんですね。
「手記を出したことで、自分自身も救われました」と話す佐知さん。
8月8日に発売だったこともあり、すでに多くの方の元に本が届き感想が続々と寄せられているそうです。
小学6年生の子が読んで書いた読書感想文を送ってくれたり、ご夫婦で読まれる方もいらっしゃったりと、佐知さんの想いは年齢問わずに届いているんですね。
もちろん、わたしも読みました。
何より、本を通して「あさひ」ちゃんに会えたことが嬉しかった。手記は、あさひちゃんが生きた証だと感じました。
この記事で本の内容について多くを語ることも考えたのですが、それはなんだか違う気がしました。実際に本を手にとっていただき、自分自身で感じたものこそが大事だなと。
手記『あさひと生きる』は、こちらのフォームからお申し込みください。
(本屋さんには置いていないので、ご注意してくださいね)
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfj_htdzzLvh5IT-om4v5Lw3-5zS_f7-qjYRhapgJPfwmLCnQ/viewform
投稿者プロフィール
- ヨガインストラクター×ライター。どちらかというと身体が硬めのヨガインストラクターです。その人に合ったレッスン内容を心がけているので、老若男女問わずレッスンを受けていただいています。ヨガレッスンは、出張ヨガがメイン。趣味は、美味しいものを食べること。ライターとして鹿児島のいろいろなことをを発信していけたらと思います。
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