奄美の妖怪「ケンムン」をご存じでしょうか。
驚くことに奄美に暮らす人の中でケンムンを知らない人はいないのでは、というほど地域に浸透しています。
ケンムンはガジュマルの木に住み着く妖怪で縁起のいい存在であると同時に、怒らせると人々に悪い影響を及ぼすとも言われています。
いたずら好きで相撲を取りたがり、中には会ったことがある人もいるようで何とも面白い存在です。
島人はケンムンとの遭遇率が高い

折角なので県立図書館奄美分館でケンムンを扱う本を探してきました。
するとどうでしょう。
出るわ出るわケンムンとのエピソードが。
ケンムンと格闘したりいたずらされたり、ガジュマルの木を切って罰を受けたり…。


この本の内容は著者が実際に語り手から聞き取ったものです。
ケンムンの役割

ケンムンはガジュマルの木を切ると怒って罰を与えるとされています。
この本によると、顔面神経痛のような罰が下るそうなのですが、実は木の汁で目が腫れたというような事らしく、ケンムン伝承は生活の教訓の一面もあるようです。
また、奄美は自然が豊かで森に一歩奥に入るとジャングルのような熱帯植物が生い茂り、毒ヘビのハブや奄美固有種の動植物が生息しています。
海はサンゴ礁が広がり遠浅の海中には沢山の生き物が暮らしています。
ケンムンはガジュマルの木や海岸、集落の近くで目撃されることが多く、大きな自然と人間の生活圏のちょうど真ん中に存在しているようなのです。
だから「あんまりそうしているとケンムンが来るぞ」と脅すことで危険を冒さないよう窘めることもあったようです。
「キセルがなくなった話」でも触れられるように、「キセルがなくなった」→「ケンムンがとった」と日常のトラブルをケンムンのせいにして丸く収めたという話も残っています。
ケンムンの姿は?
周りの島人に聞いてみると「妖怪でしょ」「河童だよね」「妖精だ」と色んな返事が返ってきました。
試しに島人にケンムンの絵を描いてもらうと姿もそれぞれ…。


背が低く手足が長いと言われたり
実際の姿はなんなんだ。
文献として記録は、江戸時代後期、奄美に遠島された名越左源太が「南島雑話」にてケンムンの絵を紹介しています。
実はこの時の絵が河童に似ているのです。
これに関して、名越左源太が島人からケンムンの話を聞くも、河童のようなイメージしか抱けず河童似の絵になったとも考えられています。(奄美郷土研究会報第44号より)

確かに、それなら島人同士で姿かたちが異なって伝わっているのは納得です。

ケンムンの存在に関する伝承や物語は、奄美の人々の間で代々語り継がれてきました。
奄美の風土や環境と密接に結びついている不思議な存在「ケンムン」は、地域の人々にとっては欠かせない存在であるとともに今も愛され続けているのです。
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